謎の「メタルとみそ汁」イベントに潜入!

2月1日、高崎“エディ”編集長は西に飛んだ。何やら妙なイベントが開催されるというウワサを聞きつけたからだ。島根県安来市で行われていたイベントの中身とは? 命懸けの(違う)潜入レポート!

 きっかけは、ツイッターのフォロワーさんからのタレコミだった。「こんなのありますよ」ということで、添付された画像には「ヘヴィメタルとみそ汁を楽しもう!」とある。その中に配置されている写真には、「●●醬油店」の看板とともにエクソダスのTシャツを着てメロイックサインをする人物の姿が。ただ、店名と顔の部分はスタンプで隠されている。

 正直、最初の感想は「何じゃこりゃ」だった。メタルとみそ汁って。しかもそれが開催されるらしい「安来市」ってどこ? っつーか「やすき」? どう読むのかすら知らなかった。


 ググって分かったのは、「安来市」は「やすぎし」と読み、島根県にあるらしい。どうやら町おこし的な「まちゼミ」というイベントの一環で、この醬油屋さんが行うものであると。


 うーん、まだよく分からない。みそ汁とメタル……。みそ汁飲みながらメタル……。一体どんな感じになるんだろう? そう考えているうちに、新たな思いつきが芽生えてしまった。


「これ、METAL JUSTICE MAGAZINEでいいネタになるんじゃね?」


 どうも、最初に紹介してもらった画像はツイッター上でもバズっているらしい。この突飛な(失礼)組み合わせは、そりゃみんな興味あるよな。しかし安来って、どう行けばいいの? 東京の自宅からだと、さぞかしたくさん乗り換えたりしないといけないんじゃないの? 一応、乗換案内を調べてみるか……。


 ここでチョー意外な結果が出た。「乗り換え1回」。え? 何それ? よく見ると、東京駅から「サンライズ出雲」という寝台特急に乗れば、一発で安来まで行けるらしい。おお~、寝台特急! いい響きじゃないの! ということで、俄然興味が増す俺。これはもう、行くしかないんじゃないの?


 ただ、さすがにそれ一本のために時間も交通費も使ってというのは、ちょっとまだ気が引ける。うーん、何か手はないものか……と思いを巡らせたところ、鳥取県米子市からすぐ近くだということに思い至る。ちょうど今月発売の格闘技雑誌で、取材を企画できるんじゃねーか? 思い当たった関係者に探りを入れると、どうやら可能っぽい。さっそく格闘技雑誌の編集部に、「こういう取材があるんだけど、たまたま別件で近くまで行くので、せめて片道分出してくれませんか」と連絡。見事企画が採用され、片道の旅費もOK! やったー! これ思いついた時は、「俺って天才かも!」と思ったもんね(笑)。


 もろもろを調整して「じゃあ参加申し込みを……」と、例の醬油店のツイートを探してみると……ゲッ! 「定員(3名)に達しました」とあるではないか! だが「どうしてもという方はまだ大丈夫ですので、ご連絡いただければ」ともある。これはねじ込んでもらうしかない! 速攻でDMして、入れてもらうことに。よーし、これで万全だぜ!


 往復やら宿やらの手配を終えて、いよいよ当日。ホントは木曜の夜から「サンライズ出雲」に乗って向かうはずだったんだが、当日の午前中に一本取材が入ってしまい、やむなく行きは飛行機で米子入りすることに。またその取材がアイドルグループというところが、昨今の仕事のカオスっぷりを象徴しているようで、何だか楽しい。朝はアイドル、夜はみそ汁とメタルって、どんな日だ!(笑)


 羽田を飛び立ち、初めて降り立った米子空港には、主催の「矢田醬油店」のご主人が車で迎えに来てくださった。前日の出席確認の際に申し出ていただいて、ありがたく甘えさせていただいた。ホンットにありがとうございます!


 車内で話すと、ご主人の矢田さんはエクソダスとドラゴンフォースからメタルに入り、スラッシュ系、スピード系がメインとのこと。実は東京出身で結婚を機に安来に来て、醬油と味噌造りに従事するようになったとか。「まちゼミ」では甘酒造り体験など「真面目な」企画もやりつつ、ご自身がメタル好きなことから、「じゃあくっつけちゃえ」ということで「メタルとみそ汁」に至ったんだそうで。一昨年に第1回をやって、その時も「参加する人なんているのか?」と危ぶんだものの、定員3名が埋まる盛況。で、お子さんの誕生のため去年はなく、今回が2回目に当たるそうで。


 聞けば、今回は後から後から連絡が相次ぎ、結局定員3名のところに7名の応募があったとか。チョー大盛況じゃないですか! しかもまさかの、「東京から参加申し込み」まで(笑)。それもこれも、ツイッターでバズったのが大きかったわけだが、「いやー、知らないところで僕の個人情報がダダ漏れになってて、ビビリました(笑)」とのこと。

 いよいよ矢田醬油店に到着、開始までちょっと時間があるので、奥さんも交え談笑。「まちゼミ」というのは地元の商工会のイベントであることもここで知る。「最初は『こんな企画で大丈夫かな』と思ったんですけど、逆に『こういうのがほしかったんです!』と言われて大歓迎されました(笑)」と、奥さん。しかも盛況なら言うことナシじゃないですか!


 この時点ですでに準備は万全。ご自宅から開催場所となる醬油店のスペース(同じ敷地内)に移動すると、みそ汁が入った鍋がいくつもコンロに置かれ、テーブルにはメタル関係の雑誌や書籍が。もちろんBGMはメタル。うーん、やっぱり変な組み合わせだ(笑)。

 開始が近づくにつれ、参加者が三々五々集まってくる。他の6人の参加者は、サバトンが好きなご夫婦(もともと好きだったのは奥さんの方だったらしい)、サンダーが好きな男性、SATANが好きな男性、アイアン・メイデンが好きな女性、そして「みそ汁が目当てで」地元から来た女性という構成。用意された名札に、それぞれ好きなバンド名を書き込んでつけるのだが、やっぱり気になるのはSATAN! 「サタンって、あの、NWOBHMのサタンですよね?」と恐る恐る聞いてみると、「あっ、セイタンですね」との返事! そうか、ずーっと“サタン”って呼んでたけど、英語読みだと“セイタン”なんですな! しかしこの安来の地でセイタン好きに出会う不思議さよ!


 矢田さんから今日のレジュメが配られ、味噌の種類、今日出される5種類のみそ汁の違いなどを軽く説明してもらった後(このへんが「まちゼミ」っぽい!)、いよいよみそ汁が出され、会がスタート! みそ汁の具はテーブルに置かれていて入れ放題なのもうれしい! まずは煮干しだしに始まり、次は昆布だし。おお、こうして飲み比べてみると、やっぱり全然違うもんなんですな。特に昆布の自己主張が心地よい!

 同時に、いろんなバンドの曲をランダムに聞きながらのメタル話もスタート。どこから来たかから始まり、お互いの好きなバンドについて、メタル情報の入手方法など、情報交換も活発に行われる。そもそも安来や米子にはメタルバーもなく、こうしてメタル好きが集まって交流する場がほとんどないとのこと。今回、集まった皆さんは地元・安来はもちろん、隣の鳥取県からも来ていて、口々に「あー、メタルの話ができるのがうれしい!」と。


 普段東京にいると、ライブもたくさん開催されてイベントもたくさんあって、なおかつメタルバーみたいな場もいろいろあるので、ともするとそれが“当たり前”と思ってしまいがち。かく言う俺自身もそうなんですが、そこでこういうイベントに参加すると、「場があることのありがたさ」を改めて実感する。うーん、やっぱり恵まれてるよな東京は。


 同時にみそ汁もどんどん進んでいく。かつおだし、厚削り節だし、合わせだし(昆布+かつお)と、どれもこれもうまい!(語彙力) それぞれたっぷり用意してあるので、一回りしたらあとはおかわり自由なのも最高! ええ、参加者で一番飲んだ自信があります(笑)。そして終盤には「白ごはんもありますけど、いる人?」なんて、断るわけがないじゃないですか! しかも自家製「金山寺味噌」のトッピングで食べられるなんて、もーう幸せすぎ!

 あ、もちろんメタル話もガンガンしながら。自分が知らないバンドが出てきたらメモを取ったり、米子のビートルズ専門店ではメタルのCDやレコードが安く買えるという話も盛り上がったりして、熱い交流に。途中で「これ、酒入ってないんだよね(笑)」「みそ汁でこんなに盛り上がるとは!」という声が思わず上がるほど。最後はみんなで連絡先を交換し合って、「またやりましょう!」「次は『まちゼミ』関係なくやりましょう(笑)」などと再会を約束し、記念撮影して終了。名残惜しい雰囲気の中、解散となった。

※参加者の皆さんで記念撮影。前列左が企画者の矢田大典さん、右が妻の敦子さん。

 

 安来市は日立金属の工場があり、「メタルの街」でもあるということで、途中には「安来がメタルで町おこししてくれればいいのに!」「この会を盛り上げてそこまで持っていこう!」という声も上がっていたが、とにかく今、島根県安来市はメタルとみそ汁が熱い街! と、俺の中で認定! 次回、開催される際には、地元や近郊の方はぜひチェックして参加するべし! あー、みそ汁うまかった!(そこか)


 というわけで、いきなり東京からやってきた人間を快く迎え入れてくれた主催&参加者の皆さん、ありがとうございました! またお会いしましょう!


TEXT by Keizo "Eddie" Takasaki / 高崎”エディ”計三編集長

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