グラハム・ボネットとも共演! コンラド・ペシナート・インタビュー「人真似だけでは、リスナーの心を動かすことはできない」

マルコ・メンドーサ・ソロプロジェクト・インタビューシリーズ最終回! 今回はギタリストのコンラド・ペシナートだ。過去にはグラハム・ボネット・バンドでも2回来日しており、そのたびに多彩なプレイスタイルが評価されてきたコンラド。今回のマルコとのツアーでも、しっかりと存在感を示していた。これからさらなる活躍が期待される彼の生の声をどうぞ!(聞き手・高崎計三、写真・Emili Muraki)


──最初に確認なんですが、来日は3回目になりますか? グラハム・ボネット・バンドで2回来て、これが3回目ですよね?

コンラド そうだね。今回が3回目だ。

──3回目ともなると、「今度日本に来たらあれをしたい」とか「あれを食べたい」とかあったんじゃないですか?

コンラド 確かに何回か来てみて、次に来たらしたいことが浮かぶようなったね。初来日は2015年のマイケル・シェンカー・テンプル・オブ・ロックのオープニングで、公演の後、1週間くらい日本に滞在したんだ。ゆっくりできたので、東京だけでなく京都にも行ったよ。美しい街だった。日本にはリスペクトと憧れの気持ちもあったから、時間をかけて散策できたのはよかったね。これまで大阪と名古屋にも行ったけど、やっぱり東京が好きだな。ただ、東京はすごく大きな街だからまだ迷うことも多いけどね。

──日本食が大好きと伺いました。

コンラド そうなんだよ! 和食が大好きで、メキシカンとイタリアンと日本食が俺のトップ3だね。和食は特に寿司が好き。あとはラーメンも好きだし、しゃぶしゃぶとか日本のカレーもいい。でも寿司と刺身が一番かな。

──なるほど(笑)。では改めて、ご自分のキャリアを紹介していただけますか?

コンラド ブラジル出身だけど、15年前にブラジルを離れた。ヨーロッパで5年過ごしたあとアメリカに移住し、今はLAに住んでいる。もうすぐ10年になるね。ヨーロッパやブラジルでもさまざまなアーティストと仕事をしていたけど、LAに引っ越してからは仕事面でいろんなことがいい方向に動き出した。LAでは出会いも多く、自分がリスナーとして聴いていたアーティストと仕事する機会にも恵まれた。サンディエゴではスティーブ・ヴァイとハウス・オブ・ブルースで共演したし、グラハムと仕事できたのは本当に夢のような出来事だ。マルコとも出会えて、アルカトラスでも楽しくやれたし、誇りに思える経験だった。ここまで幸運に恵まれていて、楽しいキャリアだ。今は自分のバンドを新しいプロジェクトとして、集中して取り組んでいる。それから、プロデューサーとして他のアーティストに関わっている。楽曲提供もしているし、ギタリスト以外の活動もいろいろやっている。2016年にはグラハムのアルバムにプロデューサーとして参加したよ。

──昨日のライブだけを見ても、いろいろなスタイルでプレーしていましたよね。特に影響を受けたアーティストは?

コンラド ギタリストとして影響を受けたアーティストはもちろんたくさんいるけど、王道かもしれないがやはりジミ・ヘンドリックスからは大きな影響を受けた。ブルースやクラシック・ロックが俺の原点と言えるだろう。ストラトキャスターを使うプレーヤーに傾倒しているんだ。ヘンドリックスも大ファンだし、スティービー・レイ・ボーンも好きだった。ハードロックではリッチー・ブラックモアだね。リッチーは俺にとって神のような存在だ。

 メタルではアイアン・メイデンが大好きなバンドのひとつだ。エイドリアン・スミスやデイブ・マーレイ。それからデイブ・ギルモアだね。スティーブ・ヴァイも好きだけど、彼はスーパー・ストラト・プレーヤーって感じだな。……好きなバンドや音楽がたくさんあるから、ひとつ挙げるのは本当に難しいよ。アイアン・メイデン、スティーブ・ヴァイ、リッチー・ブラックモア、デイブ・ギルモア、ジェフ・ベック……。ストラトを使うギタリストはだいたい好きだよ。

──レス・ポールはお好きじゃないんですか?。

コンラド 素晴らしいギタリストはたくさんいる。レス・ポールでもジョン・サイクスは好きなギタリストのひとりだ。ゲイリー・ムーアも好きだよ。でもレッド・ストラップのムーアの方がもっと好きだな。彼はギブソンも弾くよね。いい音が出れば何でもいいんだ。ザック・ワイルドもスラッシュもジミー・ペイジも好きだし。ただ、理由はわからないけど僕はストラトキャスターに惹かれるんだ。何かがあるんだろうな。

──そんな中で、今回のマルコとのツアーはいかがですか?

コンラド マルコとパフォーマンスするのは初めてだった。彼は熟練のツアー・ミュージシャンで、インスピレーションを大切にする。いいパフォーマンスをしなくちゃいけないというプレッシャーはもちろんあるよ。マルコは詳細な部分まで細心の注意を払うタイプだから、前もってのリクエストはある。でも今回のツアーで僕とプレーする時は、僕のパーソナル・スペースも大切にしてくれていて、それはとてもありがたいね。今回のツアーは昨日が初公演だったから、すべての経験が新しい学びだった。彼はステージ上のマエストロ(指揮者)的存在だから、我々は彼の動きを逃さずに見て、彼が何を求めているかを常に意識しておかなくてはいけない。例えばここで止まるとか、ここからあと何拍子続けるとかね。フリーフォームだから、常に同じじゃない。彼のリードに付いていくことが大切だね。

──あの3人編成でやったのが初めてだったとは、見ていて全然分かりませんでしたよ!

コンラド そう? それはよかった(笑)。

──フリーフォームという話でしたが、マルコの演奏に「おっ、そうきたか!」みたいなこともあるんですか。

コンラド そう! 注意深くマルコの動きを見ていないといけないんだ。彼の演奏には彼独特の流れがあって、ボリュームを上げるところ、下げるところ、一緒にプレーするところ、などがさまざまに展開する。ライブ映像を見て勉強はしたけれど、常に違うパフォーマンスをするからね。ライブでも見たけど、毎回違うんだよ!

──でも、それについていけるテクニックとセンスがあればこそ、ということですよね。

コンラド ありがとう。マルコには本当に感謝しているよ。以前にもこういう感じのバンドでプレーした経験はないわけではないんだけど、マルコほど有名なアーティストと、こういうパフォーマンスをするのは初めての経験だったよ。

──これまで活動していたバンドと、マルコとのバンドとの一番大きな違いはそういう部分ですか?

コンラド 違いはたくさんあるんだけど、一番大きいのは……スリーピース・バンドということだ。スリーピースだと、自分のスペースがよりたくさんある。だからこそひとりひとりの責任も大きい。グラハムのバンドは彼のキャリアのいろんな時期の曲をプレーしていたから、勉強することが多かった。例えばレインボーはクラシック・ロックの要素が強いけど、リッチーはブルースの要素も入れている。シェンカーはまた、まったく違ったタイプだよね。アルカトラスの曲ではメタルっぽく刻むプレーも多用されている。またアルカトラスは時代的に言うと、80年代のプログレッシブ・ロックやハードロックに近い。だから、グラハムとパフォーマンスする時のセットリストは多様で、違ったタイプの音楽が散らばっている。そういう意味では挑戦的ではあったね。

──なるほど。

コンラド でも、どちらのバンドもその時々で素晴らしいギタープレーヤーが存在している。グラハムにはイングウェイ・マルムスティーン、スティーブ・ヴァイ、マイケル・シェンカー、リッチー・ブラックモアといったギタリストとやってきたよね。マルコも同じで、彼のアルバムにはリッチー・コッツェンが参加したこともあるし、ダグ・アルドリッチもいたし、スティーブ・ルカサー……みんな素晴らしいギタリストだ。どちらのバンドもタイプは違えど、そういった部分では共通点があるね。マルコはソウルやファンクの影響も受けているから、ファンキーでグルービーな音を出す。一方グラハムはハードロックやメタル寄りだ。マルコはクラシック・ロックの要素もある。共通しているのは、バンドが素晴らしいギタリストに恵まれていること。どちらでも、僕の役割は自分のベストパフォーマンスをして、クォリティの高いライブをすることだね。

──今回もカバー曲が何曲もありました。グラハム・ボネット・バンドでもそうですが、そういう時に原曲をプレーしているギタリストを再現しようと思いますか?

コンラド 自分のプレーをすること、これだけは常に強く思っている。自分の中で最良の決断をする。それと同時にオリジナルも尊重する。そのバランスを見つけるためのアプローチが、自分の仕事であるとも思っている。単に人真似をするだけでは、リスナーの心を動かすことはできない。原曲を再現するようにプレーしようとした時期もあったが、それは俺じゃない。そこに気づいてからは、自分の中で最良の決断をしてオリジナルも大切にし、お互いにハッピーなやり方を見つけることに留意している。

──今回のマルコのように、経験豊富なベテラン・アーティストとツアーすることも多いですよね。その中で学んだことはありますか?

コンラド もちろん。その学びこそが彼らとツアーすることの醍醐味だ。自分より経験豊富なアーティストと一緒にいると、常に学びの場にいるようなものだ。グラハムとは3〜4年一緒にやっているから、一緒にいる時間も必然的に増える。彼からはビジネスについても学んだ。そして楽曲の中ではボーカル・ハーモニーを大切にする。俺にとって知識のない分野だったけど、実際に曲作りなどの作業をしていく中で、今は少し身に付いたと思っている。それはほんの一例で、たくさん学ぶことがある。マルコのツアーに参加するのは今回が初めてだけど、もうすでにいろんなことを教えてもらっているよ。人生そのもの、そして音楽家としてのキャリア、どちらにとってもより成長していくための素晴らしい機会になっているね。

──一緒に過ごした時間はまだ短いかもしれませんが、あなたから見たマルコさんはどういう人物ですか?

コンラド 一緒に仕事を始める前から、俺はマルコのファンだったんだよ。ソングライターとしてもシンガーとしても才能あるミュージシャンだと思っていた。シン・リジィのファンだから、ベースも素晴らしいと思っていた。一ミュージシャンとして、彼みたいに歌えるベースプレーヤーとパフォーマンスすることにも魅力を感じていた。マルコはこれまで、ホワイトスネイクやブルー・マーダーなど、いろんなバンドでたくさんの有名アーティストとプレーしてきた。彼の経歴を見れば、彼がどんなアーティストかよく理解できる。名だたるミュージシャンと仕事をしてきた人だから、純粋にリスペクトの気持ちしかない。ジャズ、フュージョン、ラテン・フュージョン、メタルなど多岐にわたる音楽に精通しているところも尊敬している。たくさんのジャンルをこなすのは、いくらプロのミュージシャンとはいっても難しいものなんだよ。彼と一緒にツアーをできる機会に恵まれたのは本当に光栄だね。

──今はLA在住ということでしたが、今後もアメリカをベースに活動するつもりですか?

コンラド そうだね。もう10年近く住んでいるし、今は故郷のように感じている。音楽活動をするにも適した立地だし、生活する上でもいい場所だ。今はアメリカでの生活でハッピーだ。これから何年いるかは分からないけど、今のところ動く予定はないね。

──これからの活動で、現在決まっている予定はありますか?

コンラド マルコのトリオとは年内のアメリカツアーのスケジュールについて話しているところで、まだ正式には決まっていないけど、とても楽しみだ。自分のバンド、アウト・オブ・ザ・ウッズはEPのレコーディングが済んでいて今年後半リリース予定だから、これから何か動きがあるかも。今はそれくらいかな。それと並行して、他のアーティストのプロデュースや楽曲制作もやってるよ。

──その中で一番力を入れたいのは、自分のバンドですか?

コンラド 難しい質問だね(笑)。アウト・オブ・ザ・ウッズは素晴らしいプロジェクトで、いい曲もできているし、関わっている人にも恵まれている。でも同時に、マルコのような才能あるアーティストと一緒に活動することにも魅力を感じている。だから一番を選ぶのは大変なんだ。今この瞬間にやっていることが最優先ということだね。今この瞬間は、日本でマルコとスリーピース・バンドをやっている。だから日本での活動が一番大事。LAに戻ってバンドとのレコーディングが始まれば、それが一番になる。年末にマルコと再び活動することになったら、そこに力を注ぐ。「今、ここ」に自分の全力を、心身ともに捧げることが大切なんじゃないかな。だから今はこのインタビューが最重要だよ。

──ありがとうございます(笑)。では最後に、今回あなたのプレーを楽しんだ日本のファンにメッセージを。

コンラド まずはライブに来てくれてありがとう。チケットもよく売れたということで、とても感謝している。マルコのソロ初来日に帯同できたことにも、とてもうれしく思っている。今回のツアーは素晴らしい経験になったよ。ミュージシャンとして、みんなにいい時間をあげられたのなら、これ以上のことはない。音楽という我々からのギフトを受け取って幸せになってくれたのならうれしい。またすぐに、みんなに会いに来たいね。マルコとでもいいし、自分のバンドでも、もしくはまた新たなプロジェクトでもいい。日本には楽しい思い出しかない。日本のファンの音楽に対する愛情は最高だ。しっかりと音に耳を傾けて理解してくれる。そういうファンにはベスト・パフォーマンスを見せたいと思える。また会おう!

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