21歳の新鋭ドラマー、カイル・ヒューズ・インタビュー「人生はNO PAIN NO GAINだ」

マルコ・メンドーサのソロプロジェクト・インタビュー第2弾は、ドラムのカイル編をお送りする。パワフルかつテクニカルなドラミングはもちろん、コーラスワークにも積極的に参加し、シン・リジィ「JAILBREAK」のカバーではリードボーカルも披露した彼は、まだ21歳の現役大学生だという。そんな彼にマルコとの演奏のこと、これまでのキャリアのこと、これからのことなどを聞いた。(聞き手・高崎計三、写真・Emili Muraki)


──今回のトリオでは唯一、日本に来るのは初めてなんですよね?

カイル 初めてなんだよ! 今日は明治神宮に行ってきた。日本に来てみたいとずっと思っていて、やっと叶ったんだ。すべてが新しい経験で、頭がぶっ飛んでいるよ! 僕は今21歳なんだけど、こんなに早く願いが叶うなんて思ってもみなかった。すべてが一瞬のうちに起こったみたいな気がするよ。人々にも温かく迎えてもらって、とても感謝している。最高のツアーだね!

──日本に行ったらこれをしたい、あれを食べたい、というのは考えていましたか?

カイル 寿司は絶対に食べたい!って思っていた。日本に来たらみんな寿司を食べたがるかもしれないけど、僕はもともとシーフードが好きなんだ。だからぜひ食べてみたいと思っていた。残念ながら、ツアーだとどの国に行っても現地での滞在時間が少ないんだ。でもその限られた時間の中で、できるだけやりたいことができるようにしたいと思ってる。残念ながら僕はすぐに帰らなくてはいけないんだ。次に来る時には少しゆっくりできるスケジュールを組みたいと思っている。

──お寿司はもう食べたんですか?

カイル もちろん! もう2回も食べたよ。ライブのあとにも食べた。で、今夜も食べるよ。

──いろんな寿司ネタがありますが、どれがよかったですか?

カイル 全部! とても新鮮でおいしかった。サーモンもおいしかったし、何でも食べてみたかったんだ。やっぱり日本の寿司は違うね。ついに本物を食べられて、最高だったよ!

──お寿司の話だけで時間が終わってしまいそうなので……(笑)、マルコとのバンドでは、どれぐらいプレーしていますか?

カイル 去年の2月からだね。これまで50~60公演やったかな。いや、もっと多いかもしれない。去年だけで3回ツアーをしているし、今回のは2か月のロングツアーで、まだこれからも続く。とても楽しいよ。疲労もあるけどね。

──ライブでは、あなたもコーラスをしていた場面がたくさんありました。それに加え、昨日はシン・リジィの「ジェイルブレイク」でリードボーカルを取っていましたよね。マルコとのバンドではよく歌うんでしょうか?

カイル ライブでは歌っているね。コーラスもやるし、メインボーカルもやる。自分ができることを見せたいし、みんなに証明したいという思いがある。だからマルコには、やりたいことを僕から提案するんだ。「ジェイルブレイク」も、もしよかったら歌わせてもらえないかと、自分からマルコに言った。そしたらチャンスをくれて歌えることになった。僕は柔軟だし、どんな役割もこなせる。マルコがソロプロジェクトで「ジェイルブレイク」をパフォーマンスしたことがあると知っていたから、僕から提案したんだ。

──あなたのプロフィールを見ると、子供の頃にはお父さんのバンドでプレーしていたらしいですね。

カイル 生まれて初めてのギグは父のバンドだったよ。僕は6歳からドラムを始めたんだけど、最初はほとんど趣味だった。本当は役者になりたかったんだよ。

──あ、そうなんですね。

カイル 僕の家には小さなドラムセットがあった。ある日、祖母の定年退職祝いを家でやることになって、そこで僕がそのドラムを叩いている姿を見た父が「本格的にやってみるか?」と言ってくれたんだ。父は僕が生まれる前にバンドをやっていて、パブやクラブでパフォーマンスしていた。それで父の友達も集めるからそこで叩けと。でもブルース・トラックを勉強するようにとも言われた。ギターも買ってしっかり勉強するようになって、それからはもうロックスターになることばかり夢見るようになった。それが始まりかな。

──早いスタートですよね。

カイル 父もまた音楽をやりたかったみたいで、バンドでライブをやる時は僕をゲストとして呼んでくれてた。13歳の時、バンドのドラマーがキーボードに転校することになって、ドラムが不在になった。そこで一応のオーディションをして、僕が叩くことになったんだ。僕のルーツはそこだね。マルコやバンブルフットとのプレーや、こうして東京に来てライブをやっているのも、基礎は父親とのバンドから来ている。当時、学んだことが今の自分につながっていて、今のパフォーマンスをよりよいものにしてくれているんだ。状況に応じてプレーすることなどを含めて、若い頃から現場で勉強できたのは大きいね。

──その頃から今のようなスタイルだったんですか?

カイル 父とのバンドでは歌っていなくて、ドラムを叩くだけだった。でも父からのアドバイスで、コーラスをやったり歌ったりするようになった。パブやクラブでは多岐にわたる観客に音楽を聴いてもらうから、あらゆる音楽を演奏した。でもしっかり歌うようになったのは、バンドに入って1年以上経ってからだった。父は今年50歳になる。まだ全然年寄りじゃないよ。ベーシストでシンガーだ。でも僕が運転免許を取るまではドライバーとして僕の送迎もしてくれていた。終演後は遅くなることもあるし、大変だったと思う。僕が大人になって、ようやく両親はゆっくりできているんじゃないかな。

──一番影響を受けたアーティストは?

カイル 難しい質問だな。絞るのが難しいんだ(笑)。ドラマーはマイク・マンジーニ、ジョーイ・ジョーディソン、マイク・ポートノイやマルコ・ミネマンみたいなテクニカル・ドラマーから影響を受けた。でも今はマルコとプレーしているから、スティービー・ワンダーのドラマー、スタンリー・ランドルフなんかを見て勉強している。その時求められている音楽に合わせるし、新しく学ぶ楽曲からインスピレーションをもえらえる。だから、マルコとギグをやっている時にはメタルは聴かないんだ。

──メタルをプレーすることもあるんですか?

カイル デスメタルなんかも大好きだよ。今もプレーすることがある。自分がプレーするためには、そのジャンルの曲をしっかりと聴いて理解しなくてはいけない。デスメタルもそれは同じだ。まあそれは置いといて、僕の好きなドラマーTOP3はトミー・アルドリッジ、スリップノットのジョーイ・ジョーディソン、メタリカのラーズ・ウルリッヒ。この3人はレジェンドだし、僕のヒーローだ。

──今までいろんなアーティストと一緒にプレーしていますが、その中で一番エキサイティングだった経験は?

カイル うーん……(しばらく考えている)

──難しいですか?

カイル いやいや、たくさんあって絞れないんだよ! その時々で違う体験をしているからね。ニューヨークで初めてライブした時とかは興奮したなあ。バンブルフットとしてブロードウェイのジャズクラブでプレーしたんだけど、あれは最高だった。あの時のことは絶対に忘れないよ。そしてマルコとLAの「ベイクド・ポテト」でパフォーマンスした時もよかったね。ずっとやってみたいと思っていた会場のステージに立てて、すごくうれしかった。そして昨日は、東京で初めてパフォーマンスした。すべてが特別で、ひとつだけを選ぶなんてできないね。ただ言えるのは、僕はすべての経験を楽しんでいる。こんなチャンスを僕にくれたすべての人たちに感謝している。これからもいい演奏をしたい。常に伸びしろはあると思っているんだ。マルコもバンブルフットもみんな尊敬しているよ。

──これからの活動予定は?

カイル このショーが終わったら、マルコとモスクワに行く。カルーガというところで「ワールド・オブ・ギター・フェスティバル」というイベントがあるんだ。ん、カルガ? カルーガ? 発音がよくわからないんだけどさ(笑)。それ以外にもモスクワで2~3公演あるかも。そのあと僕は別のバンドでアメリカでツアーをして、ヨーロッパも回るかも。マルコとのバンドでは、8月にイギリスのサウスハンプトンでフェスがある。僕はセッション・プレーヤーだからいろんなバンドに頼まれて演奏するというスタイルだね。それ以外では、ぜひLAに戻って活動がしたいと思っているんだ。前回LAにいた時はたくさんのチャンスに恵まれたから。できるだけ早くLAを拠点にできたらいいと思っているよ。

──今は現役の大学生だと聞きました。そんなに忙しいと、学校の方は大丈夫なんですか?

カイル 大丈夫だといいんだけどね(笑)。実はこの来日中に課題の締め切りがあって、昨日提出したところなんだけど、うまくいったかどうか。ちゃんとバランスよくできればいいんだけどね。どっちにしろツアーに出てしまうと楽じゃない。今まさにツアー中だから時間を見つけるのが大変だけど、僕は信じる力があるから大丈夫だよ。タトゥーにも入れているんだけど、人生は「NO PAIN NO GAIN」だよ。今は価値あることをやっているから、悔いはないね。

──今21歳ですよね。学校では何年生なんですか?

カイル ゲーツヘッドにある「アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・サウンド」という学校の学士過程なんだ。専攻はミュージック・パフォーマンス。あと2~4年は通うことになる。昨日提出したのは学期末の課題だから、パスするといいな。

──いろいろ大変ですね(笑)。では最後に、ファンにメッセージを。

カイル 昨夜は最高だった。見に来てくれてありがとう。みんなのサポートに、本当に感謝している。僕がなぜこの仕事をしているのか再確認させてもらったよ。キャリアは長くないけど、マルコとツアーできて本当にうれしい。僕はイギリス出身なんだけど、国によって音楽の楽しみ方は違っても、昨日のパフォーマンスではとてもハッピーな気分になれた。昨日は東京での初めてのパフォーマンスだったから、本当に特別な夜になったよ。また日本に戻ってきたいね。ありがとう!

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