マルコ・メンドーサ来日時インタビュー「今はフロントマンとしてパフォーマンスしている時が一番ハッピーだ」

5月に自らのバンドを率いて来日公演を行ったマルコ・メンドーサ。今日から3日にわたり、マルコを筆頭とするバンドメンバーの来日時のインタビューを公開する。彼らが取材に応じてくれたのは、初日の公演の翌日……ということは、2日目の公演の直前! お疲れにもかかわらず、ライブのこと、バンドや音楽に対する姿勢など、様々な質問に答えてくれた。(聞き手・高崎計三、撮影・Emili Muraki)



──ライブの翌日にありがとうございます。お疲れですよね?

マルコ 少し疲れてるけど、大丈夫。俺はいつでも疲れているんだ。疲労とともに生きる術を身に付けているんだよ。それが僕のライフスタイルなんだ。

──分かりました(笑)。昨日のライブは僕自身、すごく楽しめました。

マルコ それはよかった。どうもありがとう!

──初めて自分のソロプロジェクトで来日したわけですが、昨日の初日の手応えはどうでしたか?

マルコ ライブの後にファンからのフィードバックもたくさんもらったんだけど、ほとんどの人から「あなたの声が好きです」って言ってもらった。歌い方が好きだと。ベースプレイは知っていたけど、他のバンドではこれまで歌声を披露した事がなかったから、声も好きだってね。あとは、今言ってくれたように「楽しかった」とか「素敵な時間を過ごせた」という感想もあったね。

──最新ソロアルバム「VIVA LA ROCK」がリリースされた時のインタビューでは、「日本でもソロでやりたい」と話していましたよね。その思いが、すぐに叶いましたね?

マルコ そうだね。日本には1991年から来ていて、心の中にある風景のひとつなんだ。君が生まれる前だね(笑)。

──そ、そうですね。僕は1970年生まれですから(笑)。

マルコ とにかくそれ以来、年に1~2回は必ず日本に来ている。日本でプレーするのは自分のキャリアの大切な一部だし、友達もたくさんいる。それに日本のリスナーは良い音楽を愛してくれるから、ソロでやるにあたって日本でパフォーマンスをするのは自然な流れだった。距離もあるし、来るのはみんなが思っている以上に大変なんだ。日本やオーストラリアは離れているからね。でもオーストラリアにも行きたいと思っている。

──お客さんに歌わせたり、ご自身がフロアに下りて弾いたりというパフォーマンスがすごく楽しめました。ソロではいつもああいうスタイルなんですか?

マルコ そうだよ。1960~70年代のダイアナ・ロスのライブ映像を見たことがあって、その映像で彼女はアンコールにステージを降りて”reach out and touch somebody’s hand make this world a better place if you can...”(手を伸ばして誰かの手に触れて、この世界をもっといいものにしよう)って歌っていたんだ。これに込められたメッセージは、世界と音楽を分け合おう、この時を分かち合おうっていうことだと思う。それを見て感銘を受けたんだ。「オーディエンスの一部になるって何て美しいんだ、オーディエンスがショーの一部になるって素晴らしい」と思ったんだ。

──確かに素晴らしかったです。

マルコ ライブに来る観客は楽しいものを見たいと思って来場する。バンドがやるパーティーに参加するみたいな気持ちだね。これは俺個人の意見なんだが、オーディエンスひとりひとりに、パーティーの主催者になってほしいんだ。我々はその手伝いをする。ひとりひとりがパーティーをする準備ができてなければ、パーティーはできないから、僕はオーディエンスとバンドの間にある氷を溶かしたいと思っている。そして楽しみたい。デッド・デイジーズでも、昨日みたいに長くはやらないけど、ステージに下りてパフォーマンスしている。それがショーの構成の一部になっている。みんな気に入ってくれているみたいだしね。パフォーマーとファンを繋げる橋渡し的な役割を担っているんだ。記憶に残るライブになるだろう?

──今回の来日メンバー、カイル・ヒューズ、コンラド・ペシナートとのトリオでは昨日が初めてのプレイだと聞いて、ビックリしました。アルバムとも違うメンバーですが、メンバーはどのように選んでいるんですか?

マルコ これは幸運としか言えないんだけど、おれは「業界最高のプレーヤーたちとプレーするミュージシャンだ」という定評がある。今は「一緒にプレーしたい」と連絡をくれているギタリストが10人いる。ドラマーも10人はいるな。みんないつでも参加できる準備があると言っている。いずれもビッグネームだ。なので、例えばカイルが別のプロジェクトで多忙になってしまった場合にも、たくさんの候補の中からギタリストを選ぶことができる。この直前まで一緒だったトミー・ジェントリーもそう。トミーの前はソレン・アンダーソン、イタリア人の二コラ・コスタ、ドラムではピノ・リベルテなど。常にさまざまなミュージシャンから連絡をもらっている状態だ。「何かあったらすぐに連絡してくれ」ってみんなが言ってくれる。実際、トミーは日本ツアーを計画している段階で、別の仕事で忙しくなっていた。だから別のミュージシャンを起用したんだよ。

──そうなんですね。

ルコ 別の言い方をすると、俺のライブには俺自身をブッキングする。プロモーターは俺をブッキングしたら、一緒に最高のプレーヤーを帯同することを期待する。期待に応えるには待っている時間はないから、誰かが忙しければ、他の誰かに声をかけることになる。でもそれは、たくさんの素晴らしいミュージシャンが候補として待機してくれているからできることなんだ。人と人とのつながりも大切になってくるよね。コンラドはLAに長いこと住んでいて、連絡を取り合う仲だった。カイルが彼と繋げてくれて、3人で話をするようになった。彼は実に才能あるギタリストで、人間的にもいいヤツだから、すぐに「やろう」という流れになった。この後のロシアでのジャズ/フェスティバルからは、またトミーがメンバーに戻るよ。

──昨日のライブでも、アルバムでも、カバーソングをいろいろやっていましたよね。それはどういう風に選んでいるんでしょうか?

マルコ 昨日、オープニングでは「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」をプレーした。僕はクリームの大ファンなんだ。でも1曲まるまるプレーするのではなく、次の自分の曲へのイントロという感じでやった。それから、「VIVA LA ROCK」を聴いてくれたなら知っていると思うけど、アルバムの中でもカバーを2曲収録した。ステージでパフォーマンスできると思って録音した曲だね。シン・リジィの「チャイナタウン」は、純粋に好きな曲だから。あと、テッド・ニュージェントの「ヘイ・ベイビー」。ライブで演奏したのも、アルバムに入れたのも、どちらも歌える曲で個人的に好きな曲だ。そしてそれぞれのバンドへの敬意を表するもの。次のアルバムでもトリビュートをやりたいと思っているよ。素晴らしい楽曲はたくさんあるからね。ファンも聴きなれた曲が出ると喜んでくれる。カバーを一切やらないという選択肢もあるけど、最近はラジオで僕の曲を流してくれることもないから、みんな僕の曲を知らないんだよ。特に日本で僕の曲が流れる機会はない。でも大切なのはパフォーマンスだから。ファンに会場で良い時間を過ごしてほしいと思ってやっているんだ。

──セットリストはご自分で決めているんでしょうか?

マルコ まず自分で組み立てて、周りの意見を聞いたりする。20以上選択肢があるから、ベストな選曲をしたい。それぞれに得意な曲があるから、参加しているパフォーマーによっても曲を変えるよ。何年も音楽をやっているから、セットリストの組み方も心得ている。仲間のフィードバックも受けながら構成するけど、最終的には自分で決めているね。

──終盤に演奏した、やはりシン・リジィの「ジェイルブレイク」はドラムのカイルが歌っていましたよね。あなたのアイデアだったんですか?

マルコ そう、カイルは歌が上手だからね。カイルは「ジェイルブレイク」を知っていて、歌えると言った。それを聞いて、彼に歌ってもらうのは素晴らしいアイデアだと思ったんだ。彼もハッピーだし、シン・リジィに対してステージの上から少し挨拶ができたような感じになった。「シン・リジィの曲をやってほしい」というリクエストはたくさん来るんだ。「ヤツらは町へ」とか「DANCING IN THE MOONLIGHT」とかね。もちろんやってもいいんだけど、今回パフォーマンスしているのは、自分の曲を演奏するためなんだ。僕の楽曲、僕の演奏、僕の歌声を聞いてもらいたい。だから過去に在籍したバンドの曲をやり過ぎるのもよくないと思っている。ホワイトスネイクの曲もやってほしいと言われるよ。

──あ、それは僕も少し思いました(笑)。

マルコ そうか、でも残念ながら、絶対にやらない(笑)。デビッド・カバーデールの存在なしに、再現できないからね。ジョン・サイクスとやったこともあったけど、デビッド・カバーデールこそがホワイトスネイクなんだ。テッド・ニュージェントとはレコーディングもしたし、ライブアルバムを5枚くらい作ったから、彼らの曲をやるのは自然な流れだ。あとは、今一緒にやっているミュージシャンにも輝いてほしいと思っている。だから、自分自身の楽曲をパフォーマンスすること、そして一緒にやっているミュージシャンが輝くタイミングを作ること、これらを今のバンドとして重要視している。今日のライブは、また昨日と違う楽しいことを考えているからお楽しみに。(通訳に「ここ、すごく大切な話だからね」と念押し)

──デッド・デイジーズの時とは違って、このバンドでは完全にあなたがフロントマンですよね。フロントマンとしてステージに立つ時は違った気分になりますか?

マルコ もちろん違うよ。俺のバンドでプレーしている時は、俺の音楽を俺のやり方でやっているからね。映画でたとえると、バンドは5人のスターが共演する映画だ。ストーリーもあるが、そこに5つのパーソナリティーが重なる。アル・パチーノがいて、ロバート・デニーロ、キャメロン・ディアスなどが出演していて、全員がストーリーに大きく関わり、見せ場もそれぞれある。ソロバンドでパフォーマンスしている時、僕はそういった映画の主要キャラクターのひとりになる。それはとても楽しい。ソロだと、パフォーマンスの中でオーディエンスと一緒に音を奏でる場面もあり、自分のタイミングですべてを進めることができる。自分のバンドじゃないと、そうはいかない。デイジーズのようなバンドでは、どうしても俺は脇役に回ることになるからね。俺は脇役に徹することもできるし、それはそれでいいんだけど、自分がすべてを把握して動かせるのは魅力的だと思う。そしてもちろん全員に見せ場を作る。今は自分のバンドが楽しいし、音楽があらゆる方向に広がっていくのを感じる。今夜も昨日と違うことをやると言ったけど、それもリピーターのファンにも、より楽しんでほしいからだ。ブルージーだったりファンキーだったりする、俺たちのいろんな側面を見せたいんだ。俺たちの音楽は多種多様だ。自分が主役であるためには責任も大きく、やることも多いけど、今はフロントマンとしてパフォーマンスしている時が一番ハッピーだね。

──バンドとソロの違いって、「アベンジャーズ」と「アイアンマン」ぐらいの違いですかね?

マルコ そのたとえは面白いね! ひとつのストーリーにたくさんのキャラクターが出てくるのがバンドで、僕は常にバンドの一員として活動してきたからね。ホワイトスネイクは本当に楽しかった。全員がキャラクターの濃いメンバーで、みんながそれぞれ良いものを持ち寄っていた。

──やはり「VIVA LA ROCK」発売時のインタビューで、「ベースは土台となる役目だから、あまり変わったプレーをしようとは思わなかった」というような発言をされていました。アルバムの中でもライブでも、確かにいわゆる「ベーシストのソロアルバム」らしいスタンドプレーはありませんでしたよね。

マルコ (通訳に小声で)俺がゲイかって聞かれたのかい? イエスって答えていいよ。ウソウソ(笑)。で、何の話だっけ? あー、「VIVA LA ROCK」でフォーカスしたのは歌で、それ以外の要素は二の次だったんだ。ベーシストとしては、リズム隊としてドラマーとともに屋台骨にならないといけないけど、今回に関しては歌が曲を支える役割も果たした。ソロのボーカルやメロディーがね。ここではベースで目立つことはやらなくていいんだ。ライブ中にそういうタイミングになればテクニックを見せることもあるかもしれないけど、そうではない時に特別やることはない。俺の自意識はそう言ってるね。

──これまで長いキャリアの中で、実にいろいろなバンドで経験を積んでこられてますよね。その中で、特に感銘を受けた人物はいますか?

マルコ 全員だよ。ひとりひとりから学んだ。ジョン・サイクス、テッド・ニュージェント、ニール・ショーン、エリック・ウィンター?、ビル・ウォード。みんなから良い影響を受け、インスピレーションをもらった。ホワイトスネイクのメンバーもシン・リジィもそう。クランベリーズのドロレス・オリオーダンからも影響をもらった。一緒にパフォーマンスしたミュージシャン全員が僕にとってインフルエンサーであり、ティーチャーだ。良い悪いにかかわらず、いろいろ教えてもらったよ。悪い方は影響を受けないようにしてきたけどね。いいことは取り入れ、悪いことは手放すようにしている。

──仕事として、一緒にやりやすい人、やりにくい人がいると思います。あなたにとって、一緒に仕事がしやすい人の条件とは?

マルコ やりやすい人としかやらないから、みんな仕事がしやすいミュージシャンだよ。お互いにリスペクトし合っている間柄だからね。俺に連絡してくる人たちだって、俺とはやりにくいと思ったら、やりたいなんて言わないだろう。俺は時間にも正確で酒も飲まない仕事人間なんだよ。そういう評判を知っていて、そういうところを理解した上で、みんな俺とやりたいと言ってくれるんだと思う。Nozomu Wakai's DESTINIAで一緒にやっている若井望もそうだ。

──今の若いアーティストに、ご自身の経験から伝えたいことはありますか?

マルコ 練習すること、プレーし続けること、オープンマインドでいること、忍耐強くあること。そしてプレー、プレー、プレーだ。どのような状況であれ、自分が成長できる人とともにいること。志高く保つこと。常に知識を得る準備をすること。俺は今でも、いろんなものを吸収しているよ。

──これからの活動の予定はどうなっていますか?

マルコ LAのベイクドポテト(有名なジャズ中心のライブハウス)で、ラテンジャズ・ファンクのトリオでプレーしたあと、ロシアでギター・フェスティバルに出演する。スティーブ・ヴァイやアル・ディ・メオラも出るフェスなんだ。そのあとは2ヵ月、完全オフで家族と過ごす予定だ。フィジーに行くかカウアイ島に行くか、まだ決めてないんだけどね。月旅行もいいな(笑)。8月になったらイギリスのフェスに出演するので、その流れでいくつかライブをやる予定だ。9月はアメリカ・ツアー、10月はヨーロッパ・ツアー。詳細はもうすぐ発表するよ。11月はニール・ショーンのJourney Through Timeと一緒にアメリカでライブをやって、12月から新アルバムのレコーディングに入る。デイジーズの予定? 今のところは入ってないね。もしかしたら、来年はまた日本に来るかもしれない。そうなったらいいと思っている。あ、それはまたソロプロジェクトでね。

──お忙しいですね(笑)。では最後に、ファンにメッセージをお願いします。

マルコ ただただ感謝の言葉を伝えたい。応援と愛をありがとう。日本に僕のファンがいてくれることを、いつもうれしく思っているよ。昨日もライブに来てくれて光栄だ。今後の活動や詳細についてはmarcomendoza.comをチェックしてくれ。「VIVA LA ROCK」をよろしく。またね!

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